人工授精(AIH)について

女性の子宮内に配偶者(夫)の精子を注入して受精を補助する方法です。
腟内に射精された精子は、その一部分のみが子宮頚管を通過して子宮内に到達しますが、AIH(Artificial Insemination with Husband’s Semen)では精子を子宮内に直接注入することにより、精子が卵子に到達する可能性を高くすることを目的としています。

AIHの対象になる方

精子の数が少ない場合や、性交後試験(フーナーテスト)で精子の子宮への進入がよくない場合、腟内ではうまく射精できないが用手的には射精できる場合、不妊の原因がはっきりしない場合などで、ご夫婦がともに希望する場合、人工授精が行われます。
当科では精子洗浄用のメディウム(スパームフィルター™)を用いて、精液から運動性の良い精子だけを選別して、0.2〜0.3mlに濃縮した遠心洗浄濃縮精子浮遊液を用いる、洗浄精子AIHを行っています。

AIHの実施方法

AIHは排卵日に合わせて行います。タイミング指導と同様に外来受診をしていただき、卵胞径やLHサージの有無を調べて排卵日を推定して(排卵の前後24時間以内になるように)AIHの日を決定します。
男性の禁欲期間が短いと精子の数が少なくなってしまうことがあるので、できればAIH前1〜2日間は禁欲してください。

精液の採取方法と提出方法

銀座レディースクリニック 人工授精(AIH)

  1. 予約したAIH当日、局部と手を清潔にし、用手法(マスターベーション)で、コンドーム等を使用せず直接所定の容器に射精した全量を採取してください。精液を採取後、可能なら2時間以内に提出してください。
  2. あまり長時間経過すると精子運動が低下してしまいますが、クリニック内には採精専用の部屋がありませんのでご自宅での採取をお勧めしています。
  3. 精液の温度が下がらないように、冬の寒い日は上着の内ポケットなどに体温が伝わりやすいよう保持してお持ちください。(カイロなどは使用しないでください)
  4. 精液は予約した時間に受付に直接手渡ししてください。(予約できる時間は午前9時から12時、午後は3時です。AIH前の診察の際にスタッフがご予約をおとりします)

イラスト:JAOG「不妊治療 ILLUSTRATION FOR INFORMED CONSENT」より引用

AIHの妊娠率について

AIHにより妊娠する可能性が上昇すると期待できるのは、軽度の造精障害(精液検査の値が基準値をやや下回る)場合や、性交後試験(フーナーテスト)で精子の子宮への進入がよくない場合、腟内ではうまく射精できないが用手的には射精できる場合などです。したがって、同年代のカップルが自然に妊娠する一般的な確率を上回ることはないといわれています。
銀座レディースクリニックで2014年に行なったAIHはのべ660回、AIHにより妊娠されたかたは50名です。

銀座レディースクリニック 人工授精(AIH)

銀座レディースクリニックにおけるAIH治療成績(2014年)

  妊娠者数 実施者数 のべ実施数 実施者数
あたり妊娠率
のべ実施数
あたり妊娠率
35歳以下 25 111 178 22.5% 14.0%
36歳〜39歳 13 80 202 16.3% 6.4%
40歳〜43歳 10 59 155 16.9% 6.5%
44歳以上 2 19 125 10.5% 1.6%
総計 50 269 660 18.6% 7.6%

AIHの危険性について

  1. 生まれてくる子供への危険性

    人工授精の歴史は60年以上にわたりますが、特定の先天異常との関連性は報告されていません。
    子宮の中に注入された精子は、腟内に射精された精子と同様に卵子に到達し、それ以降の経過も自然妊娠と同様であるため、生まれてくる子供への影響はないと考えられています。(同じ理由で、AIHを行っても、注入された精子が実際に卵子に到達し受精したかどうかも自然妊娠と同様、確かめることはできません。)

  2. 女性への危険性

    ディスポーザブルの細くやわらかいAIH専用チューブを用いて精子を人工的に子宮内に注入するため、まれですが腟内の雑菌による感染を生じることがあります。(予防のために処方される抗生剤をきちんと内服してください。)また処置により少量の出血を伴うことがあります。

<不妊症の治療方法>


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